フィリピンが移転価格税制を再改正
【要旨】
フィリピンは2020年12月に移転価格に関する新通達を公表し、発表時点をもって有効になっています。
内容を一言でいうと、文書化関連要請の緩和措置です。具体的には、関連者間取引を行う全納税者に所定のフォーム(BIR Form1709)および移転価格税制関連文書の提出義務が課されていたところ、BIR Form1709の提出義務者が限定され、ローカルファイル等の移転価格税制関連文書の提出義務が保管義務に緩和されました。
以下、各点の要旨をお知らせします。
1. BIR Form1709について
BIR Form1709は国内外関連者間取引に関する詳細を取りまとめたフォームです。2020年7月の関連規定導入時点では、同フォームの提出義務は関連者間取引を行う全納税者に課されていましたが、今般の改正を受けて、以下に該当する納税者のみが提出義務を負うこととなりました。
大規模納税者(フィリピン当局(Bureau Of Internal Revenue、BIR)がLarge Tax Payerに認定した納税者)
BOI(投資委員会)、PEZA(フィリピン経済区庁)等から税務上の恩典を受けている納税者
直前2期及び当期の3期連続で営業損失となっている納税者
上記のいずれかに該当する納税者との関連者間取引がある納税者(経営幹部との取引を除く)
2. 移転価格税制関連文書について
改正前は関連者間取引を行う全納税者がローカルファイル等の移転価格税制関連文書をBIR Form1709に添付して提出することとされていましたが、今般の改正で一定の要件を満たす納税者を対象とした保管義務となりました。ただし、税務調査中にBIRが提出を受けた場合には、要求を受けてから30日以内に移転価格税制関連文書を提出する必要があります。
保管義務が課される納税者は、以下の金額基準を満たすものとされています。
年間売上高/総収入が150百万ペソ(約3.3億円)超かつ国内外関連者間取引金額が90百万ペソ(約2億円)超。なお、取引額には以下が含まれる。
Ø 関連者間で受け払いした金銭及び債権・債務金額(経営幹部との取引、配当・支店利益送金を除く)
Ø 借入残高及び関連者に対するその他債務
上記以外で以下の関連者間取引がある納税者
Ø 課税年度内の有形資産販売額が60百万ペソ(約1.3億円)超
Ø 課税年度内の役務提供、利息支払い、無形資産取引、その他関連者間取引の金額が15百万ペソ(約0.3億円)超
Ø 前年度に上記に該当し、移転価格文書の保管義務が課されていた場合
なお、保管義務がある文書は以下の通りです。
契約書等、関連者間取引を証する資料
該当取引につき源泉税を納めている場合にはその納税証明書
該当取引につき外国税額を納めている場合にはその納税証明書
(あれば)APAのコピー
移転価格文書(ローカルファイル)