メキシコの移転価格税制
【近年の動向】 (2012年5月現在)
メキシコは、これまで様々な産業において移転価格調査を積極的に行ってきてきた。近年の調査においては、グループ間役務提供取引(Intra group service transaction)の適正性を問われることが多く、役務提供の実態を示す証拠資料が無いために課税を受けるケースが増えている。また、組織再編や株の譲渡取引についても移転価格調査を積極化している。さらに調査において移転価格文書化資料を要求されるケースも増えており、文書化の重要性が増している。
【基本情報】
①税務当局
Servicio de Administración Tributaria(SAT)
②移転価格税制の課税の対象
直接又は間接的な支配関係にあるグループ企業。特定の持ち分割合は規定されておらず、持分割合が低くても移転価格課税の対象となる可能性はある。
③移転価格課税の時効
原則として5年。
④移転価格に関する開示義務、
国外関連者との取引を行う企業は、「Transfer Pricing Information Return forCross-border Intra-group Transactions」というフォームを提出しなければならない。
但し、マキラドーラによってセーフハーバーとなっている取引については免除される。
⑤文書化の義務
売上高が13百万メキシコペソを超える企業は移転価格文書化を行わなければならない。
文書化をしていない場合の罰金等の規定は無いが、移転価格課税を受けた場合、文書化が行われていれば、ペナルティーが50%軽減される可能性がある。
⑥移転価格算定方法
独立価格比準法(CUP法)、原価基準法(CP法)、再販売価格基準法(RP法)
利益法(取引単位営業利益率法、利益分割法)
現状、ベストメソッドルールではなく、CUP法、CP法、RP法が優先適用される。
⑦移転価格課税に係るペナルティー
申告漏れとなる税額の55%~70%の加算税(損失を計上している場合は30%~40%)が課される。
但し、移転価格文書化資料が準備されている場合、ペナルティーの50%が免除される可能性がある。
⑧比較対象会社の選定
ドイツの税務当局は、ドイツ企業を比較対象とすることを求める傾向にある。
データベースとしては、Dafne又はORBISが使用される傾向にある。
⑨メキシコの特徴
費用分担契約に係る費用負担が法人税法上、損金として控除が認められない。
⑩相互協議及びAPA
租税条約のネットワークは広くなく、相互協議の経験も少ないため、二重課税を解消することは困難である。APAについては、制度上認められているが、合意した実績は必ずしも多くない。
⑪使用言語
原則としてスペイン語(文書化資料については英語でも認められる可能性あり)