香港の移転価格税制
【近年の動向】 (2019年5月26日更新)
香港では、近年租税条約のネットワークを急速に拡大しており、2015年1月末時点で日本を含む32カ国と二重課税排除の協定を結んでいる。これにより、APAなどの国家間交渉が行われる環境の整備が進み、2014年には日本、オランダと2件の二国間APAを締結している。
なお、APAについては原則二国間又は多国間のAPAを前提としているが、場合によってはユニラテラルAPAも申請可能である。
また、2014年9月には自動的情報交換の枠組への賛同を表明し、2018年に移転価格税制が改正され、BEPS行動13に基づいて移転価格文書化規定が整備された。
【基本情報】
①税務当局
Inland Revenue Department (IRD)
②移転価格税制の課税の対象
国内外の関連者間取引。関連者の判断に際しては特段の数値基準は無く、持ち分や実質から判断して支配関係にあれば関連者とみなされる。
③移転価格文書化義務
BEPS行動計画13に従った形で、香港のローカル法により移転価格文書の準備義務が定められている。
【ローカルファイル】
適用年度:2018年4月1日以降
作成期限:香港法人の会計年度終了の日から9ヶ月以内
準備が無い場合のペナルティ:50,000HKD又は100,000HKDの罰金
【マスターファイル】
適用年度:2018年4月1日以降
作成期限:香港法人の会計年度終了の日から9ヶ月以内
準備が無い場合のペナルティ:50,000HKD又は100,000HKDの罰金
【CbCレポート】
適用年度:2018年1月1日以降
作成期限:最終親会社の会計年度終了の日から1年以内
準備が無い場合のペナルティ:50,000HKD又は100,000HKDの罰金
④移転価格算定方法
独立価格比準法(CUP法)、原価基準法(CP法)、再販売価格基準法(RP法)、取引単位営業利益法(TNMM)、利益分割法及びその他の方法。
最も適切な方法を適用することとされるが、伝統的な取引基準法(CUP法、再販売価格基準法、原価基準法)が利益基準法(TNMM、利益分割法等)に優先する。
⑤移転価格課税の時効
6年間(不正の場合には10年)
⑥罰則等
移転価格固有の罰則は無く、通常の法人課税に係るペナルティー(10,000HKD~100,000HKDの追徴金)が適用される。
⑦相互協議・事前確認申請(APA)
2012年4月より事前確認申請(APA)が導入された。APAは原則としては二国間又は多国間APAを前提としているが、場合によってはユニラテラルAPAも申請可能。
租税条約ネットワークは拡大しており、日本との租税条約も締結・発効していることから、課税後の相互協議・APAとも試み易い環境作りが進められている。
⑧使用言語
移転価格文書は中国語又は英語。