インドネシアの移転価格税制
【近年の動向】(2019年5月26日更新)
【基本情報】
①税務当局
Directorate General of Taxation (DGT), Indonesian Tax Office (ITO)
②移転価格税制の課税対象
特殊な関係がある国外関連企業との取引。
なお、特殊な関係としては以下の関係が挙げられている。
◆25%以上の資本関係(直接、間接、(被)共有の関係)
◆直接・間接の支配関係(共通の者に支配を受ける関係を含む)
◆血縁・婚姻による家族関係
①OECDガイドラインとの整合性
インドネシアの移転価格税制は、概ねOECDガイドラインに準拠しているが、税務調査においては異なる取り扱いがなされることもある。
③移転価格文書化義務(マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書)
I.マスターファイル
- 対象初年度:2016年
- 使用言語:インドネシア語。英語で提出する場合は、Ministry of Financeから許可を得た上で、翻訳を同時に提出。
- 年度に関連者間取引を行った上で、下記のいずれかの条件に合致する企業はマスターファイルを作成する義務がある。①関連者が当該企業より低い税率(25%)の税務管轄に所在する場合、②前年度の収入金額が500億IDRを超えている場合、③前年度の関連者間有形資産売買取引額が200億IDRを超えている場合、④前年度の関連者間無形資産取引金額が50億IDRを超えている場合。
- 期限:マスターファイル提出の義務はないが、申告書の別紙にマスターファイルが作成された日付を報告する必要がある。会計年度終了から4か月内に準備。
- 罰則:別紙の不備等による罰則は100万IDRおよび50%以下のペナルティー。税務機関にマスターファイルを適時に提出できない場合は、ITOが自主的に調査を行い、追徴税プラス月2%から最大48%の遅延利息が発生。
II.ローカルファイル
- 対象初年度、使用言語、条件、罰則はMFと同じ。尚、遅れて提出された場合は認められない可能性がある。
III.国別報告書
-
企業グループの連結総収入金額が11兆IDRを超えている場合は、国別報告書を作成する義務がある。
- 対象初年度:2016年
- 使用言語:インドネシア語。英語で提出する場合は、Ministry of Financeから許可を得た上で、翻訳を同時に提出。
- 期限:会計年度終了から12か月内に準備、申告書の別紙として提出。
- 罰則:100万IDRおよび追徴税200%以下のペナルティー。犯罪に該当する場合には12か月以下の懲役。
④移転価格に関する税務当局への開示
法人税の申告に係る事項として、国外関連取引の詳細及び移転価格文書に関する備考を求める2つの別表の提出が求められる。開示がなされない場合、税務当局から注目を受ける可能性が高くなる。
⑤移転価格算定方法
独立価格比準法(CUP法)、再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法)、取引単位営業利益法(TNMM)及び利益分割法。
2011年11月以降、ベストメソッドルールが導入されている。
⑥移転価格課税の時効
5年
⑦罰則等
税務調査を有利に進めるには文書化しておくことが有効。
移転価格課税を受けた場合: 月2%の遅延利息(最大24ヶ月分)。犯罪に該当する場合には3ヶ月以上6ヶ月以下の懲役及び/又は最大400%の追徴税が課される。
なお、罰則の軽減に当たっては税務当局に異議を申し立てることができる。
⑧相互協議・事前確認申請(APA)
相互協議:課税を受けた場合、納税前に相互協議を申し立てることが可能となる場合もあり得る(明確な法令は存在しない)。
APA:ユニラテラルAPA、二国間APA、多国間APAが可。
⑩使用言語
法令上の指定は特に無し。
(申告書上の開示にあたってはインドネシア語であるが、記帳はインドネシア語の他英語も認められており、文書化は英語でも可。ただし、英語で作成した場合は翻訳が求められる可能性もある。)