移転価格解説

カナダの移転価格税制

基本情報

カナダ

①税務当局

Canada Revenue Agency (CRA)

②移転価格税制の課税対象

50%以上の株式の保有関係のある国外関連者との取引。

但し、実質的に支配関係にあるとみなされた場合は、課税対象となり得る。

③移転価格課税の時効

7年(場合によっては6年のケースもある)

④移転価格に関する開示義務

国外取引の総額が100万カナダドルを超える場合には、税務申告時に「e T106」の様式により、取引金額や移転価格算定方法等の情報を開示しなければならない。e T106の提出を怠った場合、ペナルティーが課せられる可能性がある。

⑤移転価格算定方法

CUP法及びその他の伝統的な取引基準法が適用できる場合には、最も信頼性の高い算定方法であると考えられているが、OECDガイドラインに従って、最も適切な算定方法を選択することとされている。

実務上はTNMMが使用されるケースが多い。

⑥移転価格課税が行われた場合のペナルティー

更正金額の10%がペナルティーとして課される可能性がある。

但し、納税者が文書化資料の準備などにより移転価格の決定にあたって適切な努力をしていることが認められれば、ペナルティーを回避できる可能性がある。

⑦比較対象会社の選定

原則としてはカナダの企業を求められるが、選定できない場合には北米地域に対象を広げることも認められる。

カナダ当局は、データベースとしてStandard and PoorのCapital IQを使用しているようである。

⑧カナダ当局による移転価格課税執行の特徴

移転価格の検証にあたって、複数年度の平均による検証は認められず、各年度で検証されることとなる。

また、四分位レンジの使用は認められないケースが多い。

カナダ当局は、金融取引(金利・保証料等)について課税を行うケースが多いのが特徴的である。

⑨相互協議及びAPA

カナダ当局は相互協議の経験も多く、ほとんどのケースで合意に至っている。

また、ユニラテラルAPA、バイラテラルAPA、マルチラテラルAPAともに申請可能。

⑩使用言語

英語及びフランス語

【2016年度改正】

2016年12月15日、CRAは年次国別報告要件に関する最終規則案を公表。尚、最終規則案はOECDのガイダンスに沿っている。本規則には、マスターファイル及びローカルファイルの要件は含まれていない。

  • 年度の連結売上高が7.5億ユーロを超えている多国籍企業。当該条件はカナダで活動している子会社にも適用される。
  • 対象初年度:2016年度
  • 期限:会計年度終了から12か月以内に提出。
  • 代理提出:報告書の親会社代理提出を承認。
  • 罰則:報告義務に違反し、且つCRAから報告書の要請がなかった場合は、毎月500カナダドル(最大24か月)のペナルティーが発生する。報告義務に違反し、且つCRAから報告書を要請された場合は、毎月1,000カナダドルのペナルティーが適用される。