ブラジルの移転価格税制
【近年の動向】
ブラジルは、世界でも珍しく、移転価格税制についてOECD加盟諸国とは違った制度を有している。ブラジルの制度では、低税率国又は特区との取引について課税対象となる。
またブラジルでは、移転価格について比較的柔軟な対応がとられており、期中での移転価格算定方法の変更が認められている。
2013年からは、新ルールが適用されることとなっている。
【2016年度改正】
2016年12月29日、税務当局は年次国別報告要件に関する最終規則案を公表。本規則には、マスターファイル及びローカルファイルの要件は含まれていない。
- 条件:年度の連結売上高が22.6億BRLを超えている多国籍企業。当該条件は在ブラジル子会社にも適用される。
- 対象初年度:2016年度
- 期限:税務申告と併せて提出。(年度終了から8か月以内)
- 使用言語:ポルトガル語、スペイン語、英語。提出フォーマットは、OECD指定のXML Schema。
- 罰則:2種類のペナルティーが適用する、①期限内に報告書が提出されていない又は税務当局の要請に応じていない場合は、毎月500~1,500BRLのペナルティーが科せられ、②誤った情報を提供した場合は、取引額の3%に値するペナルティーが科せられる。
【基本情報】
①税務当局
Secretaria da Receita Federal
②移転価格税制の課税対象
同一の支配下にある企業群で、いずれか一つが低税率国又は特区に所在する場合。
③移転価格課税に係る更正期限
原則5年。
④移転価格に関する開示義務
関連者間取引の内容をまとめたものと、移転価格の算定結果を税務申告書に添付しなければならない。
⑤移転価格算定方法
独立価格比準法(CUP法)
再販売価格基準法(RP法)、原価基準法(CP法) *粗利率は業種ごとに固定率を適用。
また、輸出取引については、セーフハーバールールが適用可。
⑥移転価格課税に係るペナルティー
移転価格課税に係る特別なペナルティーは無く、一般的な法人課税の場合のペナルティーが適用される。
⑦ブラジルの特徴
他のOECD加盟国のように「独立企業原則」に準拠してはおらず、移転価格算定方法においても、固定のマージン率が用いられている。
⑧2013年からの移転価格税制改正
主な改正のポイントとしては、再販売価格基準法(RP法)の適用について、産業ごとにマージン率が定められることとなり、産業によって20%~40%の粗利益率が適用される。
また、天然資源に係る輸出入取引については、世界での先物取比価格を基準とした価格比準法により検証が行われることとなる。
また、ブラジル中央銀行を介さないローン取引に係る金利は移転価格税制の対象となり、ドル預金に係る6か月のLIBORを超える金利分は法人税の計算において控除できない。
⑨相互協議及びAPA
租税条約のネットワークは広範ではあるものの、移転価格に関する相互協議の経験は乏しく、移転価格課税に係る二重課税を解消することは困難である。
また、APAは認められていない。
⑩使用言語
ポルトガル語